ヤマダ、島根に行く(第2話、宍道湖の落日と松江の夜)
何だか、またグダグダになってしまい、書く気が失せかけてる「ヤマダ、島根に行く」ですが、とくに誰も楽しみにしてる訳でもないと思いますが、完結させます。書きます。
松江は「水の都」と呼ばれるくらい、水資源が豊富な街です。
日本海に面し、市街地は堀と川に囲まれ、宍道湖(しんじこ)、中海(なかうみ)と二つの大きな湖を持っています。松江城周辺は武家屋敷なども残っていて、城下町の風情を味わえます。
「耳なし芳一」、「雪女」などを書いた小泉八雲ことラフカディオ・ハーンが愛し、暮らした街でもあります。海の幸、日本酒、和菓子など美味しいものもいっぱいです。
ただ、残念ながら経済的には冷え込み気味(タクシー運転手さん談)のようです。交通的にもあまり便利とは言えません。松江城、武家屋敷、宍道湖の夕日・・どーんと名前を挙げられるのはそれくらいで、観光地としても北海道や沖縄、京都のような華やかさもありません。
ただ、ヤマダには馴染みが良かったです。祖母のいた土地、ということ差し引いても、また行ってみたいなと思う街でした。がんばれ松江!
自宅→羽田空港→米子空港→松江駅→出雲大社→松江駅、と一日で約800キロを移動したわけですが、久々の旅行の高揚感からかあまり疲れは感じず、まだ明るいうちにホテルに着くことができました。
荷物を置き、宍道湖畔に向かいます。市街地のど真ん中から歩いて10分でもう湖畔です。松江の水っぽさ(不適切)を感じさせます。
この日の日没時間は5時半。夕日が赤く染まり始めています。
宍道湖は汽水湖(海と少しだけつながっているため淡水と海水が混じっている湖)です。つまり海と平行しているので湖なのに水平線があるわけです。水平線に沈む夕日をみることができます。
いよいよ5時半。日没の瞬間を撮ろうと集結した大勢のアマチュアカメラマンがシャッターを切り始めます。ヤマダもケータイカメラを構えます。
どんどん沈む夕日。燃えるような赤さです。同時に湖面も真っ赤に染まっていきます。
自然界にこんな鮮やかな赤が存在するのか、と思わせる威容。圧倒的です。
ああっ、写真に変な筋が入る!ケータイカメラで太陽を撮るのはやはり無理なようです。キムタクがCMしてるデジカメやっぱり買うべきだったなぁ・・
夕食をとるため、市街をぶらつきます。美味しい魚と地酒に舌鼓を打ちたい!
そんな中、ヤマダの記憶は少年時代に飛びました。
母親の里帰りに同行したとき、連れられていった小料理屋さん。「極楽とんぼ」という名前でした。そこは、ヤマダの母が都内のデパートガールだったときの同僚が松江に帰って始めたお店でした。東京で現在の旦那さまと出会い、ふたりで松江に帰ってお店を出したのです。
当時のヤマダは超偏食のわがままっ子だったので、大人が食するような酒の肴が食べられるはずもなく、「おいしくない、つまんない、かえりたい」と不遜で傲慢な不満を大声で喚き散らし、ご主人と女将さんに気を遣わせて、母親を困らせました。結局、チャーハンをわざわざあつらえて食べさせてくれました。今思うと申し訳ない思いです。
女将さんはそんなヤマダに優しく接してくれました。
「セイリュウくん、大人になったら飲みに来てね」
時が経ち、少年はお酒と酒の肴が大好きな大人になっていました。
行ってみよう。
104に電話。「細かい住所はわからないんですけど、松江市で極楽とんぼっていう小料理屋っていうか居酒屋なんですけど・・」、20年以上前だからなぁ、なくなっていてもおかしくないよなぁ、不安が募ります。「業種の登録はございませんが、松江市東本町に極楽とんぼというお店が一件ございます」
お店に電話。「あのー、そちらは小料理屋っていうか居酒屋さんですよね?」
男性の声。 「ええ、まあ、居酒屋ですけど・・なにか?」
ビンゴ!
でもちょっと不審がられているぞ。
東本町は松江の盛り場です。夜の街です。キャバクラ無料案内所みたいなところで場所を教えてもらいます。場所なんか覚えていません。
気になるのはなにしろ、時間の壁です。居抜きで経営者が変わっている、なんてことも充分にありえるからです。不安を抱きながら店内へ。
カウンターだけの小ぢんまりとしたお店。マスターらしき人が仕込みをしています。おそらく電話の相手でしょう。旦那さんなのでしょうか。記憶にありません。
お通しから美味!あらの煮付けや名物のきのこ鍋を食べます。美味!
極めつけは日本海まぼろしの魚、ノドグロです!これは口の中が真っ黒という変わった魚で、漁獲量も非常に少ないといわれています。美味!絶味!驚味!
あっさりしているのに深い味わい。後味も残りません。
さて、食べてばっかりもいられません。
「あのー、こちらにキヨハラさん(ヤマダが覚えている女将さんの苗字)っていらっしゃりますか?」
いぶかしげなご主人。やっぱり経営者が変わってしまったのか?っていうか不審がられているぞ、絶対。
「キヨハラさんって人は知り合いで2人いるけど・・あっ、女房の旧姓はキヨハラですね」
メガヒット!
「あの、僕、奥様の友人のヤマダミチコの息子です」
無反応。
「あの、奥様は・・?」
電話をとるご主人。
「あー、私。えーとね、ヤマダミチコさんの息子さんが訪ねてきてくださってるよ」
お元気でいらっしゃった!
「すぐ来るそうです。まったくいつも重役出勤でねぇ」
お会いできる!
あの優しい女将さんにもうすぐ会えるのです!
第3話、「女将さんとの再会、そして鳥取砂丘へ」につづく
松江は「水の都」と呼ばれるくらい、水資源が豊富な街です。
日本海に面し、市街地は堀と川に囲まれ、宍道湖(しんじこ)、中海(なかうみ)と二つの大きな湖を持っています。松江城周辺は武家屋敷なども残っていて、城下町の風情を味わえます。
「耳なし芳一」、「雪女」などを書いた小泉八雲ことラフカディオ・ハーンが愛し、暮らした街でもあります。海の幸、日本酒、和菓子など美味しいものもいっぱいです。
ただ、残念ながら経済的には冷え込み気味(タクシー運転手さん談)のようです。交通的にもあまり便利とは言えません。松江城、武家屋敷、宍道湖の夕日・・どーんと名前を挙げられるのはそれくらいで、観光地としても北海道や沖縄、京都のような華やかさもありません。
ただ、ヤマダには馴染みが良かったです。祖母のいた土地、ということ差し引いても、また行ってみたいなと思う街でした。がんばれ松江!
自宅→羽田空港→米子空港→松江駅→出雲大社→松江駅、と一日で約800キロを移動したわけですが、久々の旅行の高揚感からかあまり疲れは感じず、まだ明るいうちにホテルに着くことができました。
荷物を置き、宍道湖畔に向かいます。市街地のど真ん中から歩いて10分でもう湖畔です。松江の水っぽさ(不適切)を感じさせます。
この日の日没時間は5時半。夕日が赤く染まり始めています。
宍道湖は汽水湖(海と少しだけつながっているため淡水と海水が混じっている湖)です。つまり海と平行しているので湖なのに水平線があるわけです。水平線に沈む夕日をみることができます。
いよいよ5時半。日没の瞬間を撮ろうと集結した大勢のアマチュアカメラマンがシャッターを切り始めます。ヤマダもケータイカメラを構えます。
どんどん沈む夕日。燃えるような赤さです。同時に湖面も真っ赤に染まっていきます。
自然界にこんな鮮やかな赤が存在するのか、と思わせる威容。圧倒的です。
ああっ、写真に変な筋が入る!ケータイカメラで太陽を撮るのはやはり無理なようです。キムタクがCMしてるデジカメやっぱり買うべきだったなぁ・・
夕食をとるため、市街をぶらつきます。美味しい魚と地酒に舌鼓を打ちたい!
そんな中、ヤマダの記憶は少年時代に飛びました。
母親の里帰りに同行したとき、連れられていった小料理屋さん。「極楽とんぼ」という名前でした。そこは、ヤマダの母が都内のデパートガールだったときの同僚が松江に帰って始めたお店でした。東京で現在の旦那さまと出会い、ふたりで松江に帰ってお店を出したのです。
当時のヤマダは超偏食のわがままっ子だったので、大人が食するような酒の肴が食べられるはずもなく、「おいしくない、つまんない、かえりたい」と不遜で傲慢な不満を大声で喚き散らし、ご主人と女将さんに気を遣わせて、母親を困らせました。結局、チャーハンをわざわざあつらえて食べさせてくれました。今思うと申し訳ない思いです。
女将さんはそんなヤマダに優しく接してくれました。
「セイリュウくん、大人になったら飲みに来てね」
時が経ち、少年はお酒と酒の肴が大好きな大人になっていました。
行ってみよう。
104に電話。「細かい住所はわからないんですけど、松江市で極楽とんぼっていう小料理屋っていうか居酒屋なんですけど・・」、20年以上前だからなぁ、なくなっていてもおかしくないよなぁ、不安が募ります。「業種の登録はございませんが、松江市東本町に極楽とんぼというお店が一件ございます」
お店に電話。「あのー、そちらは小料理屋っていうか居酒屋さんですよね?」
男性の声。 「ええ、まあ、居酒屋ですけど・・なにか?」
ビンゴ!
でもちょっと不審がられているぞ。
東本町は松江の盛り場です。夜の街です。キャバクラ無料案内所みたいなところで場所を教えてもらいます。場所なんか覚えていません。
気になるのはなにしろ、時間の壁です。居抜きで経営者が変わっている、なんてことも充分にありえるからです。不安を抱きながら店内へ。
カウンターだけの小ぢんまりとしたお店。マスターらしき人が仕込みをしています。おそらく電話の相手でしょう。旦那さんなのでしょうか。記憶にありません。
お通しから美味!あらの煮付けや名物のきのこ鍋を食べます。美味!
極めつけは日本海まぼろしの魚、ノドグロです!これは口の中が真っ黒という変わった魚で、漁獲量も非常に少ないといわれています。美味!絶味!驚味!
あっさりしているのに深い味わい。後味も残りません。
さて、食べてばっかりもいられません。
「あのー、こちらにキヨハラさん(ヤマダが覚えている女将さんの苗字)っていらっしゃりますか?」
いぶかしげなご主人。やっぱり経営者が変わってしまったのか?っていうか不審がられているぞ、絶対。
「キヨハラさんって人は知り合いで2人いるけど・・あっ、女房の旧姓はキヨハラですね」
メガヒット!
「あの、僕、奥様の友人のヤマダミチコの息子です」
無反応。
「あの、奥様は・・?」
電話をとるご主人。
「あー、私。えーとね、ヤマダミチコさんの息子さんが訪ねてきてくださってるよ」
お元気でいらっしゃった!
「すぐ来るそうです。まったくいつも重役出勤でねぇ」
お会いできる!
あの優しい女将さんにもうすぐ会えるのです!
第3話、「女将さんとの再会、そして鳥取砂丘へ」につづく
by crabclub
| 2006-11-09 21:29
| 遠くに出かける
髪を切ったりギターを弾いたりしています。
by 天丼で鉄板
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