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頬を平手打ち

叔母が亡くなりました。ヤマダの母の姉になります。享年70歳。全身に癌が転移していました。

夫と一人娘(ヤマダの義理の叔父と従姉妹)に看取られ、最期は苦しむことなく逝ったそうです。

叔母の10歳年下である義理の叔父は売れない画家で、今も絵を書き続けています。定職に就いたことは一度もなく家計は全て叔母が支えてきました。経済力のない叔父は終末医療にかかる高額な医療費を負担することはできません。英語とロシア語の通訳である従姉妹が島根県の港湾局で働き、保険でカバーできない医療費をまかなったそうです。

自分の生きているうちに日の目を見ることのなかった夫を支え続けた人生はどんなものだったのでしょう。

ヤマダには切なくて哀しい物語にしか思えませんでした。





折りしも昨日、同じく島根県に住む母の友人から電話がありました。県庁所在地の松江市でご主人と小料理屋を営んでいます。ヤマダも数年前お店を訪ねたことがあります。それからは島根に行く機会もなかなか無く、たまに電話で話をする、という間柄。

若かりし頃、当時デパートガールだったヤマダの母のルームメイトだったのだそうです。40年前にルームシェアという概念があったのか分かりませんが、一つ屋根の下に一緒に暮らすくらいですから親密な友人であったことは想像に難くありません。

しかし20年ほど前から友人関係は破綻していることを数年前に母から知らされました。比較的に潔癖である母と奔放な彼女では相容れるものが少なかったようです。現在のご主人も、不倫の末の略奪婚であることは本人からも、母からも聞いていました。

母は、ヤマダが彼女と時折連絡を取っているのを快く思っていません。できればあまり関わって欲しくない、とまで言われたこともあります。いくらなんでも息子が65歳に篭絡されるとは思っていないでしょうが、自分が目を背けたものに息子が向き合っている、というのはやはり居心地の良いものではないのかもしれません。

それでもヤマダは彼女の言葉に耳を傾けます。

暴力的に愛を振り回したことのある人間からは、安っぽいドラマや小説からは得ることの出来ない血の通った言葉を聞く事ができるからです。



叔母は幸せだったんでしょうかね?死ぬまで働いて、応援し続けた夫は自分が生きている間に日の目をみることはなかった。虚しさだけを抱いて、旅立ってしまったのではないんでしょうか?少しだけれど義叔父を恨めしくも思ったりする。あまりにも報われなかった人生だったんじゃないのかな。

彼女はおだやかに、それでいて力強く言います。

「それは違いますよ。女は男が思っているよりずっとずっと単純よ。経済力が高いことがそんなに重要?男が稼がなければいけないなんて誰が決めたの?夢を追い続けた男を支え続けて見守ることができて、きっと叔母さまは幸せだったと思うわ」

旧態依然とした自分の価値観を揺さぶられたようで、恥ずかしくなり一瞬沈黙してしまったヤマダを見透かすかのように

「別に遊んで暮らせって言っているわけじゃないのよ。しっかりお仕事なさってください。健気で懐の深い女性は素晴らしいっていう話。セイリュウさんにもそういう女性と一緒になってほしいわ」


浅はかでした。叔母が報われなくて辛い思いをしていたなんて、ヤマダの思い込みなのです。叔母の幸せは叔母にしかわからない。


おつかれさまでした。静かに眠ってください。合掌。
by crabclub | 2011-07-07 11:02 | 日記

髪を切ったりギターを弾いたりしています。


by 天丼で鉄板

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